■東京加害者臨床研究会
《研究会世話人・鈴木真吾による例会報告》
東京加害者臨床研究会の参加者へのメール通信として送信された内容を抜粋して、例会報告を編集しました。世話人・鈴木真吾氏の人柄がにじみ出るような、ソフトな語り口で、例会の模様がなかなかに臨場感をもって伝わってくる内容ですので、ここに紹介します。本研究会に初めてのご参加を検討されている方,迷っている方は、どうぞ研修の様子を知る参考にしてください。
(参加者への通信が、元々研修の様子を伝える目的でなかったため、報告が書かれなかった回がありますことを、ご了承ください。)
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【世話人による第11回例会(2016.11.26)報告】 さて,3年目を迎えた東京加害者臨床研究会,11月末に例会を開催いたしました。福祉(児童/女性),司法,教育,医療ほか,多様な職務の方々がご参加されました。 初参加の方々が多く,改めて加害者臨床の原点を再学習し,加害者と真摯に向かう個人面接について, 基本エッセンスである「覚悟」を忽せにしない直面化を,ロールプレイにて体験学習いたしました。 そして,社会文化がいかに加害者に加担しているか,加害者臨床に求められる文化的正義の価値観を,事例ワークを通して学びました。 初めて加害者臨床に触れる方々にはインパクトの大きい内容もあったと思われる印象ですが, これ全てみな,加害者のことばかり考えているように見えて,被害者の側に立つという前提が知れたことと思います。 質疑応答も熱いやりとりが交わされ,職種や現場に限定されず,実に多く広く加害者が潜在しているか, そして職種・現場ごとに,どのように加害者臨床のエッセンスを取り込んでゆけばよいか, 熟考させられる機会となりました。 加害者臨床での個人面接の理論・技法を,各職種・現場にて応用展開させることは,今後の重要な課題と相成りましょう。 以上,事務局(私)の私見による感想でした。 さて,次回第12回例会は,2017年2月12日(日)の開催です。 大東文化会館を会場にして行います。 |
【世話人による第10回例会(2016.9.11)報告】 さて,過日9/11(日),第10回例会を開催することができました。 加害者臨床でもいかに,心理面接の基本が大切か,身に染みる勉強会となりました。 「リソース(資源)」への注目がテーマでした。 名作「アルプスの少女ハイジ」の一コマを題材に,リソースへの注目を学びました。 ご存じの方も多いかと思いますが,この作品にはハイジとおじいさん,友達のペーター。そしてお金持ちのお嬢さんクララが登場します。 しばしば「クララが立った!」がTVバラエティやCMにも取り上げられますが,クララは身体面よりもなお,こころの面で「歩けない(歩かない)」。 今研修会では,なかなか歩く練習に挑まないクララに,ハイジとペーターが「もっと頑張れ(風に)」詰め寄り,クララが泣き出すという一コマを扱いました。 おじいさんは静かに,そして丁寧に言葉・態度を尽くして, 敢えてまとめてしまえるならば「願望があるからこその苦悩・戸惑い(という趣旨)」を,代弁します。 加害者臨床ではとかく,「もっとちゃんとしろ,頑張って向き合え」と言いたくなることでしょう。 被害者のことを想えば,むしろ被害者のことを想わねばならない臨床であるからこそ,心理面接の基本である「リソースへの注目」が面接者側に生じにくい。 リソース,そしてリフレーミングがいかに,対応・変化が困難な対象者への面接で大切となるか, 改めて学び直したように思える回でした。 次回第11回は,11/26(土)に開催です。 |
【世話人による第9回例会(2016.5.21)報告】 さて,去る5/21(土),本会第9回の例会を開催することができました。加害者臨床の技法論がベースとしている,より積極的で指示的な,心理面接技法の丁寧な講習が行われました。 心理職の間でも日本では未だマイナーな,M.エリクソンの紹介など,実践現場に役立つことを主眼に置いた勉強会でした。 加害者臨床においては,随所に「被害者の視点への共感,それを行動として体現する」を,加害者に求めるわけですが,今例会では一見よくある夫婦の光景が,いかに妻への共感に欠いたものであるか, 加害者事例を前提としつつ,その気づきから対処行動の促しまで,体系的に学びました。 多くのご参加された皆様より,好評をいただき感謝申し上げます。(今例会よりアンケート実施しております)。 さて,次回第9回は,9/11(日)に開催です。通例では8月開催としておりましたが,夏休みシーズンで各会場ともイベントが多く,次回は9月といたしました。 また,研究会の記録映像(DVD)を販売しております。実践演習(ロールプレイ)と質疑応答を中心としたもので,研究会の様子が分かる内容となっています。 恥ずかしながら私も加害者役で出ておりますが,細かくリアルタイムな面接技法のやりとりは,映像教材に勝るものはなく, 復習や今後のご参考になろうかと思います。 研究会発信のお手製なので,教材DVDとしてはかなり安価でご提供しております。 こちらDVDの販売リストも,開催案内(PDF)の2頁に付けています。 どうぞご参照ください。 |
【世話人による第8回例会(2016.2.21)報告】 花冷えの候,皆様にはご健勝のことと思います。 いつもお世話になっております。 本会も丸2年,計8回の例会に達することができました。 医療・福祉・看護・心理・・,様々な分野の方とお会いすることができ,加害者への真摯な対応に関心のある方,そのすそ野が広いことを知ることができました。 |
【世話人による第4回例会(2015.2.8)報告】 さて,立春とはいえ寒波も厳しくまだ冷え込む日々が続いておりますが,皆様いかがお過ごしでしょうか。 さて,2/8(日)に第4回東京加害者臨床研究会が開催されました。 季節開催としてちょうど1年。無事に4回を数えることができました。 御礼申し上げます。 また私の印象記録になってしまいますが,第4回の様子をお伝えします。 ご新規参加の方が8名を超え,医学から法曹界まで幅広い分野の方がお見えになりました。この分野に関心があるとのことで,福祉を学ぶ大学生も来てくれました。 社会をベースにした臨床を展開されている,草柳先生の「加害者臨床」ならではの会だなと思いました。 恒例のように先生を講師に迎えての研修会では,いつものように2本立ての内容でした。社会的背景や社会的視点の大切さを学ぶ,前論。 実際の加害者に面接指導で対峙するときの,コアなエッセンス。 このたび,精神医学の世界ではトップ・スタンダードな研究雑誌「精神療法」に, 草柳先生のエッセイ(実質的に論文)が掲載されました。「暴力の心理」に関わる特集号です。その中でも触れられているのですが,日本ではあまり適切とはいえない,加害者への心理アプローチが拡散しているとのご指摘。 【草柳氏の論文の掲載誌】 今回の研修会では,その点でグループのみで加害者を変えるという取り組みをしている団体。その概要と問題点について,ご講義いただきました。 そこから,真に加害者を更生変化させるために,個人の心理面接も重要であることをご説明いただきました。 そしていつものように,加害者への面接技法に関して,デモンストレーションを通してご教示がありました。 他に,草柳先生が上映記念トークイベントにご出演される,映画「ら」のご紹介などがありました。(実際の性犯罪被害者の女性が監督を務めた,ノンフィクションに近い作品)。 以上,私見になりますがご一読いただきありがとうございました。 |
【世話人による第3回例会(2014.11.22)報告】 さて,11/22(土)に第3回例会が開催されました。 新規の方も毎回お越しいただき,この分野の潜在的な関心の高さがうかがえるなと思いました。 いつものように草柳先生を講師にお迎えして,加害者対応の面接スキルを学びました。今回は特に,「直面化」のセットとして,いかに加害者への 「共感」が重要かを教えていただきました。 一般的な心理面接での共感を超え,一種タブーとも言われそうなくらい「極端な共感」が必要である意義を,丁寧にご説明いただき,本会の特徴でもある講師によるロールプレイのご披露で,実践的に学ぶことができた会でした。 さまざまな一般的といわれる心理面接のタブーを,ある意味で盲目的に繰り返すことなく,加害者という特異な心理的・社会的存在に適した技法に昇華させたゆえの,「極端な共感」技法。 このような発想や技法も,他では学ぶことはできないだろうと考えさせてくれる会でした。参加者みなさまからも,前2回よりもさらに活発に議論伯仲となった印象です。 最後に,精神医学系専門雑誌「精神療法」の最新号に,草柳先生の論文が掲載される旨,紹介させていただきました。2015年1月刊行予定です。 心理系専門雑誌「こころの科学」に続き,いわゆる業界大手の専門雑誌が加害者臨床の分野にて,草柳先生の理論展開を掲載する価値を認めているものと思います。感動です‥。 【草柳の論文の掲載誌】 以上,今回も私的感想です。参加者みなさまのお気持ちを汲めていないかと思いますが,簡単な通信になっていれば幸いです。 |
【世話人による第2回例会(2014.8.17)報告】 模様が続きすっかり暑さが遠のいた分,寒さを感じることもあり身体が付いてゆくのが大変な時節となりました。ご体調など崩されずにお過ごしでしょうか。 さて,8/17に第2回例会が開催されました。 毎回,講師みずから臨床場面のスキルをロールプレイにて披露していただける点が,本会では特出しております。今回も初回参加者の方が手を挙げて下さり,相談者役を引き受けていただきました。 加害者臨床という本邦では稀有な領域での実践が長い講師により, 冷静沈着,底に流れる熱い意志と情熱に溢れた,実用的なスキルを学ぶことができました。 また,本会研修会ではドラマやアニメに渡る多様な映像にも着眼して,面接場面のあり様や加害者臨床に不可欠な社会文化的視点を学んでいます。 今回は「大河ドラマ 徳川家康」の一場面から,加害者と対峙するときの面接エッセンスを取り上げていただきました。過去には「志村けんのお笑い番組」や「アルプスの少女ハイジ」も紹介されました。 以上はあくまで私見ですが,非常にユニークな研修会です。 加害者臨床にご関心のある方でしたら,なおその価値を実感できるものと思います。 年4回開催を目安に活動を続けていきたいと思いますので,ご都合が付くときはどうぞお気軽にご参加ください。 第3回は次の日程で開催いたします。 日時:11月22日(土)14時〜17時 |
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